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物語詩『永遠の命を探した王子』
かつてレオンは
この場所で夜空を見上げながら
問い続けていました。
「星たちは永遠に輝き続けるというのに
なぜ人間の命は
こんなにもはかないのだろう」
けれど今は
その答えを知っていました。
人の命は永遠ではありません。
だからこそ人は愛し
懸命に生きるのです。
だからこそ今日という日が輝くのです。
6月22日読了時間: 11分


物語詩『黒鏡』
オルメディア王は
頭上高く黒鏡をかかげ
大理石の床へ叩きつけました。
黒鏡は悲鳴のような音を立て
無数の欠片となって散りました。
6月12日読了時間: 3分


物語詩『王冠を捨てた日』
すべてを手に入れた老王アシャル。
かつては剣をもって舞い
戦場で勝利をたぐり寄せ
ばく大な財産を積み上げました。
しかし――
忠誠を誓う家臣はいても
真の友を持ったことはなく
血染めの勝利を手にしても
安らぎは得られませんでした。
老王アシャルの胸には
長いようで短かかった
人生の終末を予感させる
冷たい風が吹き始めました。
彼は自分に問いかけました。
「我はこの一生で
いったい何か手に入れたのか」と。
ひとり寝室から空を見上げる夜
王冠を外した老王の頭上には
ただ星々だけが瞬いていました。
5月31日読了時間: 6分


『水をめぐる物語~湖の妖精と魔法使い』第三部
『水の指輪と白い龍』 第一章 心に忍びよるエルゴムの闇 火の獅子の災いから歳月が流れ 森を救った魔法使いディプセウスは 都の有力者の娘エリカと結ばれ ひとり息子ユウを授かりました。 人びとは力を合わせ ソルの塔をふたたび高く建てました。 市場には食べものが戻り 街には活気があふれました。 都は、もとの姿を取り戻したようでした。 それでも 笑い声には、どこか濁りがありました。 言葉の端には、かすかな棘がありました。 人びとの心には 見えない闇が広がっていたのです。 人を信じきれない疑い。 失うことへの恐れ。 それは外から来るものでもなく 心の奥で生まれるものでもない。 ただ、忍び込むもの。 ――エルゴム。 その闇は 世界の彼方からひそかに広がりながら 人の恐れと共鳴していました。 人びとは知らぬ間に 互いを遠ざけ始めていました。 ふたたび建てられたソルの塔 第二章 神は人の心に手を触れない 「また火の玉が落ちるらしい」 誰が言い出したとも知れぬうわさが 乾いた草に火が移るように広がりました。 富める者は地を掘り 閉ざされた地下の部屋をつくり 燃
4月17日読了時間: 5分


『水をめぐる物語~湖の妖精と魔法使い』第二部
『火の獅子をしずめた者の物語』 第一章 言葉をなくした旅人 声を失ったディプセウスは 宮殿の宴に呼ばれなくなりました。 人びとはディプセウスを哀れみ どう接してよいのかわからず しだいに距離を置くようになりました。 ディプセウス自身もまた 言葉を持たぬ自分に絶望し 人の輪を避けるようになりました。 やがてディプセウスは 砂漠の王国を静かに去り 隠れるように各地を歩く旅に出ました。 人里を離れて森に入り 動物たちと暮らすようになったのは それからしばらく後のことです。 動物たちとの暮らしに 言葉は必要ありませんでした。 ディプセウスは 生まれて初めて 何も語らずに生きる時間を知ったのです。 ディプセウス、砂漠の王国を去る 第二章 火の獅子のうわさ ある日 遠くの都から飛んできた鳥が 不安な知らせを運んできました。 都で起きた戦争と火事が 長い火の道をつくり その中に 火の獅子が生まれたというのです。 燃えるたてがみ 炎の息 怒りだけで形づくられた獣。 その炎の奥には 形を持たぬ影が かすかにゆらめいていました。 その獅子が 森へ向かって進んでい
2月13日読了時間: 4分


物語詩『白い帆と花束の丘』
紺青の海と白岩の岸 その島に若者は生きていた。 潮の満ち引きが繰り返され 明日は来るものだと疑わずに。 この地で愛おしい娘を妻に迎え 名もなき時間を重ねていくこと それが幸福なのだと 彼は思っていた。 だがある日 水平線の裂け目から 白い帆が現れた。 風を孕んだ帆は まだ見たことのない 世界の息づかいを運び 若者の胸に 眠っていた問いを呼び覚ました。 「外の世界を知らずに ここで暮らすことが 幸せだろうか」と。 その日から若者の視線は 足元の浜ではなく 遠い大海原へと向けられた。 若者には恋人がいた。 白百合のように純真で 素朴な美をまとった娘。 月が海を銀に変える夜 若者は浜辺で 恋人に胸の内を開いた。 「広大な海を渡り まだ見ぬ異国に触れて 己の力を試したい」という 白い帆が運んできた幻の望みを。 娘はその言葉の奥に 戻れない分かれ道を見た。 そして涙をこらえて 静かに言った。 「あなたが あなた自身を裏切らずに 生きられるのなら」 月の下で ふたりの影はひとつに重なり やがてほどけた。 そして白百合の香りだけが 夜の浜に残った。 ――選ばれ
1月18日読了時間: 3分


『水をめぐる物語~湖の妖精と魔法使い』第一部
『水の環をうばった者の物語』 第一章 なくならない湖と青い指輪 森のいちばん奥に いつも静かに水をたたえる湖がありました。 その湖は どんな日照りの年にも 一度も干上がったことがありませんでした。 湖に住む妖精リュミアは とても心のきれいな存在でした。 人を疑うことを知らず 困っているものを見れば すぐに手を差し出す妖精でした。 天の高いところには 世界のしくみを見守る神 アルケオンがいました。 けれどアルケオンは ひとりひとりの願いごとには 耳を傾けません。 人びとの祈りは 風のように通りすぎていきました。 ある日 アルケオンは気まぐれに ひとつの青い指輪をリュミアに与えました。 それは 水の流れを導き 世界をめぐる力をまとめる アクアマリンの指輪でした。 リュミアはその指輪の力で 雨の少ない年にも湖を満たし 森をうるおし たくさんの命を守りつづけました。 水がなくなることなど 考えたこともありませんでした。 湖の妖精リュミア 第二章 良さそうで欲ばりな考え そのころ 人間の国との境に ディプセウスという魔法使いがいました。 ディプセウスは 言
1月8日読了時間: 4分
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