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物語詩『魔法使いと湖の妖精』第二部(龍 博詞 作)
『火の獅子をしずめた者の物語』 第一章 言葉をなくした旅人 声を失ったディプセウスは 宮殿の宴に呼ばれなくなりました。 人々はディプセウスを哀れみ どう接してよいのかわからず しだいに距離を置くようになりました。 ディプセウス自身もまた 言葉を持たぬ自分に絶望し 人の輪を避けるようになりました。 やがてディプセウスは 砂漠の王国を静かに去り 隠れるように各地を歩く旅に出ました。 人里を離れて森に入り 動物たちと暮らすようになったのは それからしばらく後のことです。 動物たちとの暮らしに 言葉は必要ありませんでした。 ディプセウスは 生まれて初めて 何も語らずに生きる時間を知ったのです。 第二章 火の獅子のうわさ ある日 遠くの都から飛んできた鳥が 不安な知らせを運んできました。 都市で起きた戦争と火事が 長い火の道をつくり その中に 火の獅子が生まれたというのです。 燃えるたてがみ 炎の息 怒りだけで形づくられた獣。 その獅子が 森へ向かって進んでいると 鳥は震えながら告げました。 ディプセウスは 森の奥で眠る動物たちを見つめ 胸の奥に 感じ
1 日前読了時間: 4分
![ミルトン(PLATE 11[12])/ MILTON](https://static.wixstatic.com/media/976d0c_3b267c1ea596418380fc1b9969feba20~mv2.jpg/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_30,blur_30,enc_avif,quality_auto/976d0c_3b267c1ea596418380fc1b9969feba20~mv2.webp)
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ミルトン(PLATE 11[12])/ MILTON
彼はエルサレムに向けて顔を定め、アルビオンの永劫を滅ぼそうとした しかしロスは、エニサーモンをこれらすべての光景から隠した その和やかなハーモニーが彼女の魂を安らかにするテムズ川のほとりで。 そこでは、愛らしきビューラが岩のアルビオンへと終わりを迎える。 ハイド・パークでは、タイバーンの恐ろしい小川で終わりを迎える。 そしてサタンの製粉所は、月のような空間に分離された アルビオンの神殿の岩々の間で、そしてサタンのドルイドの息子らは 全地にわたって人身供犠を捧げ、そしてアルビオンの 恐るべき墓所は、その岩の上で不滅のまま、全地を覆い隠した。 そこにおいてサタンは、自らのアイデンティティから法を作った。 他者に、道徳的感謝と服従をもって自分に仕えるよう強制した 神と呼ばれつつ、神と呼ばれるすべてのものの上に自らを据えながら。 そして死者のすべてのスペクターは、自らを神の子と称し、 彼の会堂において、言い表しえない名のもとにサタンを崇拝する そして問われた。なぜ大いなる厳粛な集会において、 無垢な者が罪ある者のために断罪されるのか、と。すると永遠なる者
4 日前読了時間: 5分


詩『永遠という名の鎖/A Chain Called Eternity』(龍 博詞/Hiroshi Ryū)
縛られない自由な心は揺れ動き
揺れるからこそ生き続ける
―生きる心は自由を恐れないから
1月31日読了時間: 2分
![ミルトン(PLATE 10[11])/ MILTON](https://static.wixstatic.com/media/976d0c_3b267c1ea596418380fc1b9969feba20~mv2.jpg/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_30,blur_30,enc_avif,quality_auto/976d0c_3b267c1ea596418380fc1b9969feba20~mv2.webp)
![ミルトン(PLATE 10[11])/ MILTON](https://static.wixstatic.com/media/976d0c_3b267c1ea596418380fc1b9969feba20~mv2.jpg/v1/fill/w_250,h_188,fp_0.50_0.50,q_90,enc_avif,quality_auto/976d0c_3b267c1ea596418380fc1b9969feba20~mv2.webp)
ミルトン(PLATE 10[11])/ MILTON
そしてロスとエニサーモンは、サタンがウリゼンであることを知った オークと影の女によって、生成の中へと引きずり降ろされた存在と しばしばエニサーモンは泣きながらその空間へと入り、 そこに現れるのは、街路を狂乱してさまよう年老いた女であった (その空間はカナンと名づけられている) そして彼女は、夢から覚めたかのように怯え、疲れ果ててロスへと戻った 女性的空間の本性とはこうである。それは、 それ自体は無限に見え、生命の諸器官を有限となるまで縮小する。 そしてサタンは、その空間の無量の広がりの中で振動した。 外にある者には有限だが、内にある者には無限。それは落下して カナンとなった。アルビオンの断崖でロスを永遠から閉め出した 神聖な人類に対抗する強大な悪魔が戦争に向けて召集しつつ サタンよ!ああ、我よ!彼らの神は彼の場所へ行った、とロスは言った! 私は彼らの教会で礼拝することも、彼らの劇場で王を礼拝することもない エリニトリアよ!この嫉妬はいずこから、山々を走り巡っているのか ブリテンの女たちは、ギリシアやローマが嫉妬していたとき、嫉妬などしなかった..
1月20日読了時間: 3分


物語詩『白い帆と花束の丘』(龍 博詞/Hiroshi Ryū)
『白い帆と花束の丘』 紺青の海と白岩の岸 その島に若者は生きていた 潮の満ち引きが繰り返され 明日は来るものだと疑わずに この地で愛おしい娘を妻に迎え 名もなき時間を重ねていくこと それが幸福なのだと 彼は思っていた だがある日 水平線の裂け目から 白い帆が現れた 風を孕んだ帆は まだ見たことのない 世界の息づかいを運び 若者の胸に眠っていた 問いを呼び覚ました 外の世界を知らずに ここで暮らすことが 幸せなのだろうかと その日から彼の視線は 足元の浜ではなく遠い大海原へ 向けられるようになった 若者には恋人がいた 白百合のように純真で 素朴な美をまとった娘 月が海を銀に変える夜 若者は浜辺で恋人に 胸の内を開いた 広大な海を渡り まだ見ぬ異国に触れて 己の力を試してみたいという 白い帆が運んできた幻の望みを その言葉の奥に娘は 戻れない分かれ道を見た そして涙をこらえて静かに言った 「あなたが あなた自身を裏切らずに 生きるのなら」 月の下で ふたりの影はひとつに重なり やがてほどけた 白百合の香りだけが 夜の浜に残った 選ばれなかった言葉のよ
1月18日読了時間: 3分


物語詩『魔法使いと湖の妖精』第一部(龍 博詞 作)
『水の環をうばった者の物語』 第一章 なくならない湖と青い指輪 森のいちばん奥に いつも静かに水をたたえる湖がありました。 その湖は どんな日照りの年にも 一度も干上がったことがありませんでした。 湖に住む妖精リュミアは とても心のきれいな存在でした。 人を疑うことを知らず 困っているものを見れば すぐに手を差し出す妖精でした。 天の高いところには 世界のしくみを見守る神 アルケオンがいました。 けれどアルケオンは ひとりひとりの願いごとには あまり耳を向けません。 人びとの祈りは 風のように通りすぎていきました。 ある日 アルケオンは気まぐれに ひとつの青い指輪をリュミアに与えました。 それは 水の流れを導き 世界をめぐる力をまとめる アクアマリンの指輪でした。 リュミアはその指輪の力で 雨の少ない年にも湖を満たし 森をうるおし たくさんの命を守りつづけました。 水がなくなることなど 考えたこともありませんでした。 湖の妖精リュミア 第二章 良さそうで欲ばりな考え そのころ 人間の国との境に ディプセウスという魔法使いがいました。 ディプセウス
1月8日読了時間: 4分


物語詩『水の環を奪いし者の物語』(龍 博詞/Hiroshi Ryū)
第一章 尽きぬ湖と与えられた環 森の奥に澄んだ水をたたえる湖 その湖は枯れることがなかった。 湖に棲む清らかな妖精リュミアは 疑うことを知らぬ存在であった。 天上のアルケオンは世界の理を司りながら 地上の個々の行く末には関心を払わぬ主神。 祈りは風のように彼をすり抜けていった。 あるときは気まぐれに ひとつの指輪をリュミアに与えた。 水の流れを命じ、世界への巡りを束ねる アクアマリンの環を。 リュミアはその青い指輪の霊力により 目まぐるしく変転する気候に抗して 湖を満たし、森を潤し、命を守り続けた。 その永遠にも近い水の充足は 「失われるかもしれない」という想像を 彼女の内から奪っていった。 第二章 正義をまとう欲望 そのころ、人の領域との境界あたりに ディプセウスという魔法使いがいた。 彼は言葉を操り、姿を変える術に長けていた。 海の向こうの砂漠にある王国の噂―― 雨なき空、細る泉、枯れゆく命の噂を聞き 「水に欠乏する地があるのなら、 満ちあふれる地より移せばよい」と考え その理屈は彼の中で正義の衣をまとった。 「話に聞くあのリュミアの指輪さえ
1月8日読了時間: 4分


ミルトン(PLATE 9)/ MILTON
そして、すべてのエデンはパラマブロンの天幕へと降りてきた アルビオンのドルイドと吟遊詩人たちの間で、アルビオンの死の寝床の下の洞窟の中で 死の洞窟の中、大西洋の片隅で。 そして大集会の真っ只中で、パラマブロンは祈った。 おお神よ、我が友から私を守り給え。彼らが私に力を持たぬように あなたは私に、最も苦々しい敵から自らを守る力を与え給うたのだから。 我が言葉によく心に留めよ。それは汝の永遠の救済に関わる その時、二人の証人、リントラとパラマブロンが立ち上がった。 そしてパラマブロンは全エデンに訴え、 裁きが下された。そして見よ、それはリントラと彼の怒りに落ちた。 その怒りは今、パラマブロンに対してサタンの内で高く激しく燃え上がり、 ついにはエデンのことわざとなった。サタンは堕落者の中にいる、と。 ロスは憤怒のうちに天と地を呪い、諸国を引き裂いた。 高くそびえるドルイド神殿に囲まれたアルビオンの岩の上に立ち それらは天の星々にまで届き、極地から極地まで広がっていた。 彼は大陸を移動させ、海は彼の顔の前から逃げ去った 彼は世界の極を、東西南北へと変化さ
1月4日読了時間: 6分


物語詩『王アシャルの変身譚』(龍 博詞/Hiroshi Ryū)
『王アシャルの変身譚』 プロローグ すべての権力を掌に収めた老王アシャル かつて彼は剣で舞い、盾に名を刻み 戦場は彼の采配で勝利を手繰り寄せた。 彼は鎧をまとい、塵と血の雲を割って進み 都市を屈服させ、財宝を山と積み上げた。 しかし、忠誠はあったが真の友はなく 勝利はあったが安らぎはなかった。 独りの夜、王冠を外した彼の頭上には 星々のみが沈黙して瞬いていた。 第一章 白き使者の書簡 老王アシャルの胸には終末の風が吹き始め 彼は自らに問うた 「我が人生は何を生み出したのか」と。 ある憂鬱の日、高き空より白い鳥が舞い降り 城の頂にある王の部屋の窓辺に止まった。 白い鳥が嘴で差し出した一通の書簡には 東方の神秘の国より届けられた魔術師の言葉 ――汝、すべてを持つがゆえに空虚なり ――すべてを捨てる覚悟があるならば 若さと放浪と再び鼓動する魂を与えよう ――選ぶなら、この使者の頭を三度撫でよ 王は震えながら 冠と剣、築き上げた帝国を秤にかけた。 そしてついに、彼は自らに言い聞かせた 「生の歓喜なき永命はすでに死である」と。 王の老いた指が三度白き頭に
2025年12月31日読了時間: 3分


ミルトン(PLATE 8)/ MILTON
一方、サタンはロスの前でパラマブロンを告発して泣いた。 自らをきわめて穏やかな口調で弁護しつつ。彼自身は確信していたから 反抗的な召使たちを虐げたり傷つけたりしたことはないことを。 しかし、サタンは自らの製粉所に戻り (パラマブロンは、より容易な務めとしてサタンの製粉所に仕えていたが) 大混乱に見舞われた そしてロスに戻ったが、復讐心ではなく涙に満たされ、 パラマブロンの卑劣さを確信していた。ロスが見ると 製粉所の召使たちは酒に酔い、踊り狂い 叫び声とパラマブロンの歌で森の緑は引き裂かれ 太陽が高く昇っていたにもかかわらず、混乱がこだましていた。 その時、ロスは左の履物を脱ぎ、それを頭に載せた。 それは厳粛な哀悼のしるしであった。製粉所の召使いたちは その合図を見ると、酒に酔っていながらも、沈黙して立ち尽くした。 ロスは泣いた!しかしリントラも来て、エニサーモンも 彼の腕に寄りかかり、震えながら、これらすべてを見守った。 そしてロスは言った。「製粉所の精霊よ!太陽は高く昇っている。 労働が汝を呼んでいる!パラマブロンもまた悲しき悲しき苦境にあ
2025年12月27日読了時間: 6分


物語詩『2050年、沈黙の居住区』(龍 博詞/Hiroshi Ryū)
『2050年、沈黙の居住区』 居住区は生命維持装置となった。 知性は人工知能に委ねられ 感覚は人工の楽園に浸され 数万人の生命が管理される褐色の巨塔。 選び抜かれた光 調律された音 合成された香り 最適化された食 計算し尽くされた皮膚への刺激。 欲望は細分化されカスタマイズされ 不足という言葉は、いつしか消えた。 やがて人びとは、それぞれの殻へと 静かに引きこもっていった。 長いあいだ開かれることのなかった 巨塔の一室の前で ノアとタクティオの仲間たちは立ち止まる。 硬く閉ざされた扉 内側にあるのは沈黙のみ。 タクティオ――触れ合いを大切にする人びと 彼らは外を歩き、互いの声を聞き 詩を読み、絵を掲げ 楽しみを創造しながら生きてきた。 そして、彼らは知っていた。 人間は、単独で完結する存在ではないことを 関係のなかでこそ人は人間になることを。 ノアは扉を叩き 低く、しかし確かな声で住民の男の名を呼んだ。 何度も、何度も―― やがて――扉はきしみ 長い眠りから覚めるようにゆっくりと開いた。 現れたのは 人間から遠ざかってしまった存在。 背は湾曲し、
2025年12月21日読了時間: 2分


ミルトン(PLATE 7)/ MILTON
第一は、世界の基礎の据えられる以前より選ばれた者たち。 第二は、贖われた者たち。 第三は、見捨てられ、母の胎より滅びのために形づくられた者たち。 我が鋤に従え! 第一の階級に属していたのはサタンであった。比類なき温和さで。 ロスへの彼の原始的で暴君的な企て。最も愛情深い愛をもって、 彼はロスにパラマブロンの持ち場を与えるよう優しく懇願した。 なぜなら、パラマブロンは毎晩労働に疲れ果てて戻ってきたから パラマブロンはしばしば拒んだ。そしてサタンはしばしば奉仕を申し出た 繰り返される申し出と、繰り返される嘆願によって ロスは彼に全能者の砕土機を与えた。ああ、非難すべきことだ パラマブロンは怒ることを恐れた、サタンに恩知らずと告発され、 サタンの極度の温和さにロスが告発を信じることを恐れて サタンは一日じゅう働いた。それは千年であった 夕方、恐れに満ち、働き過ぎ、驚愕して戻るとき 兄弟は涙をもって優しくパラマブロンを抱擁し、彼もまた泣いた 私の言葉をよく注意せよ!それらは汝の永遠の救済に属する 翌朝、パラマブロンは立ち上がった。砕土機の馬たちは...
2025年12月17日読了時間: 5分


物語詩『透ける皿と満ちる倉/The Transparent Plate and the Overflowing Granary』(龍 博詞/Hiroshi Ryū)
『透ける皿と満ちる倉』 ある山あいの国に昼も夜も手を止めぬ人々がいた。 岩を砕き鉱石を掘り、闇の奥からかすかな光を掬い上げ、 それを宝石として磨きあげて、惜しみなく王に献じた。 王はそれらを交易に回し、 宝石は穀物となり布となり、黄金に姿を変えていった。 年ごとに国の倉は高く、高く積み上がり、 やがて雲の影をその肩に抱くほどになった。 人民思いを装う王は人々に言った。 「倉が満ちれば、いずれお前たちの皿も満たされる」 その声は穏やかで、言葉に疑いの影はなかった。 だから人々は働いた。 身体が悲鳴をあげても、手のひらが裂け血が滲んでも、 王が定めた月の満ちる日には、 息を詰めるように磨き上げた宝石を捧げ続けた。 倉はさらに高く、さらに重くなり、 王は誇らしげに告げた。 「国はかつてなく豊かである。 余剰は積み上がり、この国の未来に不安はない」 だが不思議なことに、 人々の皿はいつまでも浅いままだった。 子もまた親の背を追って働いたが、 皿の底は透け、満ちることはなかった。 ある日、臣下を連れ交易へ向かう王の前に、 ひとりの若者が進み出た。 声は震
2025年12月13日読了時間: 4分


ミルトン(PLATE 6)/ MILTON
ゴルゴヌーザ、すなわち霊的な四重の永遠のロンドンから、 巨大な労苦と悲嘆のうちに、絶えず建てられ、絶えず崩れ去り、 地上すべてを覆うアルビオンの四つの森を通り抜けて、 ロンドン・ストーンからブラックヒースへ。西はハウンズローへ、 北はフィンチリーへ、南はノーウッドへ。そして エニサーモン織機の重りがアルビオンの風にリズムを奏でる。 北部のケイスネスから、南部のリザードポイントとドーバーへ ロスの槌音は高く鳴り響き、そのふいごは大きく聞こえる ロンドンの前に広がるハムステッドの幅とハイゲートの高みへ、 ストラトフォードと古きボウへ、そしてケンジントンの庭園へ、 タイバーンの小川にて。テムズ川はうめき声をあげる リントラとパラマブロン、シーオトルムとブロミオンの鉄の鍛冶場の下で、 収穫の道具、すなわち諸国を越える鋤と砕土機を鍛えるために サリーの丘は炉の燃え残りのように輝き、 ランベスの谷、エルサレムの礎が築かれた場所。そして廃墟と化した場所 あらゆる国からの廃墟と化し、樫の森が根を張った場所。 炉口の前には、燃える灰の山が暗くきらめく。...
2025年12月8日読了時間: 5分


寓話詩『晩秋のある日の森で/On an Autumn-Evening in the Forest』(龍 博詞/Hiroshi Ryū)
『晩秋のある日の森で』 秋も深まり、冬の足音が土の底からかすかに忍び寄るころ。 夕暮れの野原では、名残の花がそよぎ、 渡り鳥たちは冷たい風に抗うように、細い声で風に応えるように鳴きかわしていた。 その静寂のひと隅で、兄弟はばったりと出会った。 「これは兄さん。どちらかへの遠征の帰りですか?」 「よう、弟よ。今日はマンヒューの領分に、少しばかり稼ぎに行ってきた」 「あそこは危ないですよ。ご先祖様の教え、忘れないでください」 兄はふっと鼻を鳴らした。 「俺はあんな奴ら、少しも恐れちゃいない。 昔はマンヒューも森との境をわきまえていたらしいが… 長い間に前とはすっかり変わっちまった。 年ごとに欲深くなり、森に爪ばかりを立てやがる」 生まれつき血の気の多い兄は、積もった落葉を蹴り上げた。 葉は夕陽を受けて火の粉のように舞い、その中で兄は吠えた。 「この大地は誰かの私物じゃない。 生きとし生けるものは皆、神から借りた時間を、 ほんの束の間だけ生きているに過ぎん。 それを忘れ、森を荒らし、 我らの種族を追いやろうとする奴らを決して許しはせん。.
2025年12月5日読了時間: 3分


ミルトン(PLATE 5)/ MILTON
朝、燃え盛る砕土機を携えてパラマブロンは帰還する 息づく野原から。サタンは砲火の下に気絶した キリストは処女の胎内で罪を負い、十字架の上でそれを消し去った 皆は哀れな者を憐れみ、憤る者には怒りを抱き、ロスはそれを聞いた。 これが美しきアルビオンの娘たちの流儀である。 誰もが頭と心と手綱において三重であり、 誰もがビューラの三つの天へと通じる三つの門を持ち、 それらの天は、額と胸と腰のうちに透き通って輝き、 近づき難い火焔に囲まれている。しかし、彼女らは望む者を、 酩酊する悦びのうちに、その天へと引き上げる 選ばれし者は、贖われるのではなく 道徳律の残酷な絆の中で、供犠と償いによって絶えず創造される者である それゆえ三つの階級の人間は定まった目的地へと辿り着く 彼らは二つの対立する者と、推論によって否定する者である。 女たちが犠牲を整える間、男たちは炉で そして竃で涙と苦痛のダンスを踊る。 激しい稲妻が彼らの四肢を打ち、 彼らは旋風を解き放って炉をあおり、 金床のまわりで嘆きつつ、かく歌う ああ、弱く広く、道に迷って!ああ、狭く哀しい形に閉じ込めら
2025年12月3日読了時間: 5分


物語詩『闇の窓/The Window of Dark』(龍 博詞/Hiroshi Ryū)
『闇の窓』 賢きアシャル王は、地下に設えた秘密の部屋で 黒鏡の前に座し、揺らぐ蠟燭の影を背負いながら ひとり呟く。 「いったい何というものだ。 この魔法の黒鏡―― 鏡板を抱く縁取りの銀細工は星辰の意匠、 きっと名のある職人の手によるものに違いない」 だが真に畏るべきは、鏡板そのものに宿る霊威。 この世界の森羅万象は、その闇の底へ吸い込まれ、 見えざる網の振動を伝って叡智界へと届く。 そして彼方の神聖なる叡智界より編み戻される糸は、 瞬きよりも早く預言を結び、鏡面に兆しを刻む。 まさに、叡智の風が流れ込む闇の窓であった。 かつての王は、己が胸奥に燃ゆる思索の焔を頼みとしていた。 臣下や民の声に耳を澄まし、 いざ決断の折には雷鳴のごとき言葉で国を導いた。 ――紫の巨大な翼が城を覆った、あの陰鬱の夜までは。 愛しきクラリス姫の身体は、熔けた岩のように灼熱し、 肌には赤黒の斑が噴き出ては沈んだ。 純白のドレスを春の花のように纏っていた姫は、 小鳥のさえずりに似た愛らしい声を失い、 砂嵐を胸に呑み込んだかのような苦悶と、 紫の靄が満ちる朦朧の中で喘いでいた
2025年12月1日読了時間: 5分


ミルトン(PLATE 4)/ MILTON
リントラの鋤と全能者の砕土器の下で パラマブロンの手に。サタンの星の製粉場は、 俗世の殻の地と水の下に建てられている ここで人間の三つの階級は性的構造を織り成す 性的なるものは三重。人間は四重である。 もし、そなたが怒りながら沈黙し、それを知恵とみなすなら、そして、 それを表に出さないなら。私はそれを知恵ではなく愚かさとみなす。 すべての人の知恵は、彼自身の個体に特有である おおサタン、我が末子よ、そなたは星空の軍勢の王子ではないか そして、昼も夜も製粉場を回転させる天の車輪の王子ではないか? そなたはニュートンの全能者であり、ロックの織物を織っているではないか 死すべき運命の人間には、そなたの製粉場は全てに見え、全能の神の砕土器に見える 人間の行動の計画は目に見えず、理解することもできない そなたの製粉場での労働へ行け、そして私を私の怒りに任せておけ。 サタンは言い返そうとしたが、ロスは大きな雷鳴を轟かせた。 私を怒らせるな!そなたは憐れみの道に砕土器を駆ることはできない。 そなたの仕事は、製粉場と炉と大釜とともにある永遠の死だ。...
2025年11月26日読了時間: 4分


ミルトン(PLATE 3)/ MILTON
エニサーモンの機織り機によってアルビオンが山々で殺されたとき そして彼の天幕の中、生ける姿、神の幻視への羨望によって そして人間の想像力における叡智の競技への羨望によって それは主イエスの神聖なる御体であり、永遠に祝福される。 私の言葉をよく心に留めよ。それは汝の永遠の救いのためである。 ユーリゼンは闇と孤独の中に、心の鎖に縛られ、横たわっていた ロスは槌と火箸を握りしめ、断固とした金床で働いた。 不確かなドルイドの岩、疑念と推理の雪の中で。 あらゆる明確な形を拒否し、抽象的な恐怖が屋根を張った。石のように固く。 そして最初の時代が過ぎ去り、陰鬱な悲嘆が訪れた。 恐怖とともに、赤い球体が熱く燃えながら沈んだ 深淵の底へと。喘ぎ、球状に集まり、震えながら そして第二の時代が過ぎ去り、陰鬱な悲嘆が訪れた。 転がって二つの小さな球体となり、二つの小さな洞窟に閉じ込められた その目は深淵を見た。堅固な骨が全てを凍りつかせぬように そして第三の時代が過ぎ去り、陰鬱な悲嘆が訪れた。 彼の視覚の球体の下から、二つの耳が近くで回転していた 玉は深い闇の中に勢いよ
2025年11月22日読了時間: 5分


ミルトン(PLATE 2)/ MILTON
ミルトン 第一巻 ビューラの娘たちよ! 詩人の歌に霊感を与えるミューズたちよ 汝らの領域において不滅のミルトンの旅路を記録せよ 柔らかな性的幻想にある、恐怖と穏やかな月光の輝きを 漂白者を楽しませ憩わせるために、さまざまな美を 彼の燃えるような渇きと凍えるような飢えよ! 私の仲間に入れ 私の右腕の神経を伝って降りてくる、汝らの穏やかな力によって。 汝らの機関のそばにある、私の脳の門から 永遠の偉大なる神的人類は、彼の楽園を築いたのだ そしてその中で、死者の亡霊たちに甘美な姿をとらせた 彼自身に似せて。偽りの舌についても語れ! 植物に覆われた 汝らの影の地の下に。その犠牲について、そして その捧げ物について。不可視神のイメージであるイエスが その餌食となるまで。治療、供え物、そして贖罪として アルビオンの天国にある永遠の死のために、そして ビューラの下の天国にある、彼の流出のエルサレムの門前に まず語れ! 永遠を彷徨ったミルトンを何が突き動かしたのか 百年もの間、摂理の入り組んだ迷路を思索し 天国で不幸に暮れながらも、彼は従い、呟かなかった。彼は沈
2025年11月15日読了時間: 3分
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